2026年の予測市場インサイダー取引:PolymarketとKalshiで記録された全事例
2025〜2026年に予測市場で起きたインサイダー取引と相場操縦の事例を、出典付きですべて一覧にしました。誰が訴追され、誰が和解し、何が疑惑にとどまるのか、そしてニュースの前に価格はどう動いたのかをまとめています。

2026年10月26日時点で、2025〜2026年に予測市場で記録されたインサイダー取引や相場操縦の事例は25件にのぼります。このうち六件は当局による措置で、米国のCFTCによる四件とイスラエルの刑事事件二件です。六件は取引所や雇用主による処分、13件は訴追に至っていない調査や疑惑です。有罪判決を受けた人はまだいません。米国で初めての陪審裁判は、Maduro拘束作戦の情報をもとに取引した兵士の裁判で、2026年12月7日に暫定的に予定されています。
以下の各事例には、日付、プラットフォーム、金額、現在の状況を記し、一次資料がある場合はそのリンクも載せています。あわせて29市場の価格推移も確認しました。疑惑が指摘された市場は、比較対象の市場よりもニュースの前に大きく動いていましたが、その差は統計的に確かなものではなく、米国の刑事事件二件は最終日の価格にほとんど表れていませんでした。訴追は裁判所が判断するまで疑いにすぎず、不審な取引は犯罪の証拠ではありません。本記事は公開情報をもとにまとめた参考資料であり、法的助言ではありません。
予測市場でのインサイダー取引は違法?
米国では、既存の商品関連法に当てはまる場合は違法です。米商品先物取引委員会(CFTC)は、雇用主、顧客、政府などに対する義務に反して得た秘密情報で取引することを、商品取引所法(CEA)第6条(c)(1)およびCFTC規則180.1に基づく詐欺として扱います。CFTCの執行部門は2026年2月25日、この考え方が規制下にあるすべての取引所のイベント契約に当てはまるとの見解を示しました(CFTCのアドバイザリー)。
ほかにも重要なルールが二つあります。第4c条(a)(4)のいわゆる「Eddie Murphyルール」は、政府職員が非公開の政府情報で取引すること、またその情報を伝えられた人が取引することを禁じています。CFTCはこのルールをMaduro事件で初めて適用しました。さらに、結果を左右できる立場の人が市場を欺いた場合は相場操縦で訴追される可能性があり、CFTCは元下院議員George Santosの件をこの形で処理しました(CFTC)。
KalshiとPolymarketも独自のルールでこれを禁じているため、規制当局が動かなくても、トレーダーがアカウントを失い、制裁金を支払うことがあります。米国外では各国の刑法が適用され、イスラエルは機密漏洩、スパイ行為、贈収賄の罪で起訴しました。
情報に基づく取引がすべて違法なわけではありません。自分で行った調査、公開データで作ったモデル、自分で実施した世論調査に基づく取引は、両プラットフォームのルールで認められています(Polymarketの市場健全性ポリシー)。境界線は、秘密を守る義務を通じて得た情報かどうか、そして結果を決める力を持っているかどうかです。
記録された全事例:2026年版リスト
リストは三つのグループに分けました。ニュースで「インサイダー取引」と呼ばれるものには、刑事訴追から、取引所による$2,000の制裁金、攻撃の前に買いを入れた匿名ウォレットまで、まったく性質の異なるものが含まれるためです。
当局による措置(6件)
| 日付 | プラットフォーム | 人物と内容 | 金額 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年2月12日 | Polymarket | イスラエル空軍の予備役少佐と民間人の友人:2025年6月のイスラエルによるイラン攻撃のタイミング | 利益$162,663 | テルアビブ地方裁判所に起訴、係属中 |
| 2026年4月23日 | Polymarket | 米陸軍曹長Gannon Ken Van Dyke:「2026年1月31日までにMaduroは退陣するか?」 | 利益$404,000超 | CFTCとDOJ(SDNY)が訴追、本人は無罪を主張、2026年12月7日に公判予定 |
| 2026年5月27日 | Polymarket | GoogleのエンジニアMichele Spagnuolo:Google検索ランキング(Year in Search)2025の契約 | 利益約$1.2M | CFTCとDOJ(SDNY)が訴追、係属中 |
| 2026年7月31日 | Kalshi | 元下院議員George Santos:「一般教書演説に出席するのは誰か?」 | $35,070を支払い | CFTCと和解(相場操縦)、3年間の取引禁止 |
| 2026年8月16日 | Polymarket | 別のイスラエル空軍少佐:イランとイエメンへの攻撃 | 非公表 | 起訴前の聴聞手続き |
| 2026年8月28日 | Kalshi | ホワイトハウスのプロンプター操作担当Gabriel Perez:大統領の発言市場 | $172,539を支払い | CFTCと和解、3年間の取引禁止 |
出典:CFTCプレスリリース9217-26、9237-26、9276-26、9289-26;NPR(WLRN経由)、JFeed、The Yeshiva World(N12を引用)。
取引所・雇用主による処分(6件)
| 日付 | プラットフォーム | 人物と内容 | 金額 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年2月25日 | Kalshi | カリフォルニア州知事選の候補者Kyle Langford:自身の選挙(2025年5月) | 制裁金$2,246 | 5年間の取引停止 |
| 2026年2月25日 | Kalshi | MrBeastのチャンネルの動画編集者:同チャンネルの動画に関する契約(2025年8〜9月) | 制裁金$20,398 | 2年間の取引停止、CFTCに報告 |
| 2026年2月27日 | Polymarketほか | OpenAIの従業員:会社の機密情報を使った予測市場での取引 | 非公表 | OpenAIが解雇 |
| 2026年4月22日 | Kalshi | 連邦議会選の候補者三人(Mark Moran、Ezekiel Enriquez、Matt Klein):自身の選挙 | 制裁金$530〜$6,200超 | 5年間の取引停止 |
| 2026年8月31日 | Kalshi | 候補者三人(Stephen Cloobeck、Ben Midgley、Laurie Buckhout):自身の選挙 | 最大$31,770 | 3年間の取引停止 |
| 2026年10月15日 | Polymarket | エチオピアとルーマニアの選挙市場のアカウントペア:仮装売買 | 出来高$600M超 | アカウントを凍結 |
出典:CFTCのアドバイザリー(2月25日)、NPR、WIRED、AP(WTOP経由)、ABC News、WIRED(DNYUZ経由)。
訴追に至っていない調査と疑惑(13件)
| 日付 | プラットフォーム | 市場 | 報じられた内容 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年10月10日 | Polymarket | 2025年ノーベル平和賞 | 発表の数時間前にMaría Corina Machadoの価格が約4%から約70%に上昇。三つのアカウントで計約$90Kの利益 | ノーベル研究所が内部調査、結果は未公表 |
| 2025年11月15日 | Polymarket | 「ロシアは11月15日までにミルノフラドを制圧するか?」 | 判定に使われるISWの前線地図が無断で編集され、実際には起きていないロシア軍の前進が、市場の締め切りに合わせて表示された | 404 Mediaが報道 |
| 2026年2月28日 | Polymarket | 「米国は2月28日までにイランを攻撃するか?」 | 一日のうちに入金された六つのウォレットが、攻撃の数時間前に「Yes」を購入。利益は約$1M | オンチェーン分析者が指摘 |
| 2026年3月1日 | Polymarket | イラン攻撃のタイミング | あるアカウントが、攻撃が公になる約71分前に最初のポジションを建てた。利益は$553,000超 | 疑惑 |
| 2026年3月16日 | Polymarket | イランのミサイル攻撃に関する契約 | トレーダーが、市場の判定根拠となる記事を書き直すよう記者に圧力をかけた | 報道あり、編集部では未確認 |
| 2026年3月25日 | Polymarket | Taylor Swiftの婚約 | 発表前の大量の買い。学術的なスクリーニングで検出 | 疑惑 |
| 2026年4月8日 | Polymarket | 米国・イランの停戦 | 少なくとも50の新規ウォレットと一つのウォレット群($600K超)が、停戦の投稿前に「Yes」を購入 | Torres下院議員がCFTCに調査を要請 |
| 2026年4月23日 | Polymarket | パリの日最高気温 | 空港の気象センサーへの細工の疑い。$119が$21,398に | Météo-Franceが警察に被害届 |
| 2026年5月 | Polymarket、PredictIt | 選挙 | 選挙陣営のスタッフが内部世論調査に先回りして取引 | メディア報道 |
| 2026年5月19日 | Polymarket | ダブリン中央選挙区の補欠選挙 | 約$1Mが取引され、その多くはある候補者が当選しない側への取引 | アイルランド政府が調査 |
| 2026年6月30日 | Polymarket | 5分間のビットコイン上昇・下落 | 最後の数秒の現物注文が精算価格を動かした。指摘された時間帯の利益は約$8.2M(報道の数字) | 学術論文、ルール変更 |
| 2026年7月2日 | Kalshi | 6月にSpotifyで最も再生された曲 | 500,000回を超える不正な再生で、ある曲が1位に押し上げられた | Kalshiが調査中と報道 |
| 2026年10月9日 | Kalshi | 「Graham Platnerは撤退するか?」 | 不利なニュースの前夜に、連動した安値での買いが入った | 研究者が指摘 |
出典:The Block、404 Media、Wikipedia、The Block、NPR(NHPR経由)、Harvard Law School Forum、Decrypt、Torres下院議員、NPR(WAMC経由)、NPR(VPM経由)、RTÉ、arXiv、The Block、CNN。
オンチェーン分析者は、ウォレットにいつ資金が入り、何を買ったかは見られますが、誰が管理しているかはわかりません。2月のイラン関連ウォレットを指摘したBubblemapsも、完全に確信を持つことはほぼ不可能だとしています。三つ目の表は、まだ答えの出ていない問いとして読んでください。
米国の四件を詳しく
兵士とMaduro市場
CFTCによると、米陸軍特殊部隊の曹長Gannon Ken Van Dykeは2025年12月26日にPolymarketのアカウントを開設し、12月30日から1月2日にかけて「2026年1月31日までにMaduroは退陣するか?」の「Yes」シェアを436,000枚以上購入しました。彼は、1月3日にNicolás Maduroを拘束した「アブソリュート・リゾルブ作戦」(Operation Absolute Resolve)の情報を持っていました。約$33,000が$404,000超になりました。彼はのちにPolymarketにアカウントの削除を求めています(CFTC、NPR(WRVO経由))。
CFTCは、イベント契約でのインサイダー取引を訴追するのは初めてだとしています。Van Dykeは無罪を主張し、Polymarketの契約は商品取引所法上のスワップではないとして公訴棄却を申し立てました。CFTCの民事訴訟は刑事裁判が終わるまで停止しており、公判は2026年12月7日に暫定的に予定されています(ABC News、Decrypt)。
GoogleのエンジニアとYear in Search
スイス在住のGoogleのソフトウェアエンジニア、Michele Spagnuoloは、2025年10月から12月にかけて「AlphaRaccoon」という名前で、Google検索ランキング(Year in Search)2025に関する契約を少なくとも23件取引しました。CFTCによると、彼は社内の機密検索データを使い、約$1.2Mの利益を得ました。ニューヨークの検察当局は刑事訴状を提出し、Googleは彼を休職扱いにしました(CFTC、TechCrunch)。
プロンプター操作担当者と発言市場
発言市場(メンション市場)は、話し手が特定の言葉を口にするかどうかを問う市場です。Gabriel Perezはホワイトハウスでプロンプターを操作しており、2025年12月から2026年2月にかけて、演説原稿を見られる立場でKalshiの大統領発言契約を取引しました。利益は$107,500を超え、CFTCと和解して$107,539を返還し、捜査への協力を理由に減額された$65,000の制裁金を支払いました。彼を検知したのはKalshiの市場監視で、Kalshiが当局に付託しています(CFTC)。9月22日にはCFTCのスタッフが、発言市場は結果が一人の言動で決まるため相場操縦のリスクが高いと警告しました(CFTC)。
George Santosと一般教書演説
Santosは、自分が2026年の一般教書演説に出席するかどうかを問う契約を取引しながら、自身の予定について誤解を招く投稿を続け、価格を自分に有利な方向へ動かしました。CFTCはこれをインサイダー取引ではなく相場操縦と判断しました。彼は事実認定を認めも否定もせずに$35,070を支払い、三年間の取引禁止を受けました。Kalshiはその後、彼を永久追放しています(CFTC、The Block)。
ニュースの前に価格は動いた?29市場の検証
インサイダーが一般より先に取引しているなら、価格はニュースの前に動くはずです。これを確かめるため、リストの中から、市場と、情報が初めて公になった時点(T0)の両方を特定できる九つの出来事を選びました。対象は計15市場で、14がPolymarket、一つがKalshiです。これを、誰も疑惑を指摘していない似た出来事の14市場と比較しました。比較対象は、発表日があらかじめ決まっているもの(ほかのノーベル賞、TIMEのパーソン・オブ・ザ・イヤー、Google検索ランキングの他のカテゴリー)と、突発的な出来事(攻撃や停戦)です。比較対象を選ぶルールは、価格データをダウンロードする前に決めておきました。
各市場について、最終的に実現した結果が、T0前の24時間で$1までの残りの距離をどれだけ進んだかを測りました。ある契約がニュースの前に20¢から60¢になったなら、残りの道のりの半分を進んだことになります。

2025年ノーベル平和賞は際立っています。María Corina Machadoの契約は、発表の前日に0.85¢、六時間前に65.5¢、直前に71.7¢で取引されていました。発表は10月10日09:00 UTCです。この日の売買代金は約$976,000で、通常の日は約$1,800でした。発表日が決まっている比較対象の市場で、これに近いものはありません。その中央値は5%で、単一の契約での最大値も35%でした。
米国の刑事事件二件は、最終日にはほとんど表れていません。Maduroの契約は6.5¢から11¢への上昇にとどまりました。CFTCが名指しした二つのカテゴリーにあるGoogle検索ランキングの六つの契約は、差し引きでは動いていません(中央値−2%)。どちらのトレーダーも数日から数週間かけてポジションを積み上げていたため、直前の急騰だけを探すスクリーニングでは見逃していたはずです。

全体では、疑惑が指摘された市場のほうが大きく動いたものの、確かな差とは言えません。中央値の出来事はニュースの前に残りの道のりの24%を進み、比較対象は5%でした。出来事が九つと七つしかないため、この差は統計的に確かなものではありません(片側Mann–Whitney検定、p = 0.15)。
インサイダーがまったくいなくても、価格が早めに動くことはあります。比較対象では、Donald Trumpが合意は非常に近いと公に述べたあと、イスラエルとハマスの停戦の契約が17¢から93.5¢に上がりました。公式発表の前にPoliticoが報じたTIMEの2024年の人選は、80¢から97.5¢になりました。価格チャートの上では、公のシグナルやメディアのリークは内部からの漏洩と見分けがつきません。

価格よりも、誰が取引したかのほうが二つのグループをよく分けます。ニュース前の24時間に、疑惑が指摘された市場の出来高は中央値で通常の日の10.4倍、比較対象は1.4倍でした(p = 0.005)。勝った側への$500以上の大口購入のうち、約五分の一(22%)は直前の一週間以内にPolymarketに初めて登場したウォレットによるもので、比較対象では中央値がゼロでした(p = 0.009)。2025年6月のイスラエルによるイラン攻撃の前には、大口の買い手67人のうち25人が新規ウォレットでした。
この差の一部は、サンプルの性質から生じています。いくつかの事例は、まさに新規ウォレットや出来高の急増を理由に指摘されたものだからです。大きな出来事は新しいユーザーも呼び込みます。2月28日の攻撃の前には、大口の買い手267人のうち130人がその月に初めて登場していました。
タイミングの設定で結果は大きく変わります。市場は最初の報道から数分以内に反応します。イスラエルの契約は、テヘランからの最初の報道の一時間前でもまだ17.5¢だったので、動きはすべて最後の一時間に起きました。T0をTimes of Israelの最初の記事に合わせて11分遅らせると、割合は46%から99%に跳ね上がります。私たちはどの市場でも記録で確認できた最も早い公の報道を使ったので、数字は控えめなものです。
つまり、ニュース前の価格の急騰は調べる理由にはなっても、証拠にはなりません。法的に最も明確な二件は最終日の価格にほとんど痕跡を残さず、ニュース前の最大級の値動きの一つはインサイダーとは無関係でした。
インサイダー取引と相場操縦の違いは?
インサイダー取引とは、他の人が持っておらず、自分にも使う権利のない情報で取引することです。相場操縦とは、価格や結果そのものを変えることです。2026年の相場操縦の事例は、四つの形をとりました。
- 結果を自分で左右する。候補者が自身の選挙で取引し、Santosは自分の出席をめぐって取引しました。
- 判定ソースへの細工。パリでの気象センサーへの干渉の疑い、Spotifyの不正な再生、編集された前線地図です。
- 精算価格への圧力。5分間のビットコイン市場では、最後の数秒の一方向の現物注文が精算価格を動かしました。Polymarketは2026年8月7日、これらの市場を時間加重平均価格による精算に切り替えました(Coinpaprika)。現在の精算方法は、短期BTC市場28,150件の分析で解説しています。
- 仮装売買。10月15日の「選挙が終わった後に$600M」という報道は、アカウント同士で取引して出来高を水増ししていた話で、インサイダーが利益を得た話ではありません。
トレーダーにとって、リスクの中身は異なります。インサイダー取引は、取引相手が自分より多くを知っているということです。相場操縦は、結果や精算価格が実際の出来事を反映していないおそれがあるということです。
KalshiとPolymarketはインサイダー取引をどう取り締まっているか
| Kalshi | Polymarket(国際版) | Polymarket US | |
|---|---|---|---|
| 規制 | 2020年からCFTCの規制を受ける取引所(DCM) | オフショアのプラットフォームで、CFTCの登録取引所ではない | CFTCが指定した取引所。2025年11月からブローカー経由で利用可能 |
| 本人確認 | 取引前に完全なKYC | 完全なKYCはなし。取引はPolygon上で公開 | ブローカーが実施 |
| ルール | 重要な非公開情報を使った取引、判定元機関の職員による取引、結果に影響を与えられる人による取引を禁止 | 2026年3月23日から:盗まれた機密情報、違法な情報提供、結果への影響力に基づく取引を禁止 | ルールブックに同じ規定 |
| 予防策 | 公職者、選挙陣営スタッフ(FECのデータと照合)、アスリート(IC360経由)のブロックリスト。6月からは高リスク市場で職業情報を収集 | ChainalysisとPalantirによる監視。元FBI幹部が調査を統括 | NFAによる監視 |
| 公表された数字 | 2026年第1四半期に調査150件超、ブロック100件超、当局への付託20件超 | ウォレット情報の共有315件超、付託90件超、逮捕2件(同社サイト) | 非公表 |
出典:Kalshiのインサイダー取引ルール、Kalshiのブロック対象トレーダー、Al Jazeera、Decrypt、Polymarketの市場健全性ポリシー、Polymarketのルール(Business Wire経由)、PR Newswire、CNN。
どちらの仕組みにも穴があります。Polymarketの国際版では一人が多数のウォレットを開けるため、イランや停戦をめぐる疑惑には「新しい」ウォレットが関わっています。Kalshiは本人確認を行っていますが、懲戒処分を公開するアーカイブはいまだに「近日公開」のままで(Kalshiのお知らせ)、ほとんどの事例はプレスリリースや報道を通じて明らかになっています。
取引が公開されていることには両面があります。誰でもPolymarketで不審なタイミングの取引をスクリーニングでき、リストにある疑惑の多くは外部のアナリストから出てきました。Van DykeとSpagnuoloに対する米国の訴追は、国際版での取引をめぐるものです。米国のユーザーは、どこで取引しても米当局の手が届く範囲にいるからです。
インサイダー取引はどれくらいあるのか?
本当の規模は誰にもわかりませんが、四つの研究がおおよその幅を示しています。
| 研究 | データ | 主な結果 |
|---|---|---|
| Mitts(コロンビア大学)とOfir(ハイファ大学)、2026年3月 | Polymarket、2024年2月〜2026年2月 | 不審なウォレットと市場の組み合わせ210,718件、勝率69.9%、「異常な利益」は約$143M。著者はこれを下限としている |
| Gómez-Cram、Guo、Kung、Jensen、2026年4月 | 2023〜2025年のPolymarketの全取引、172万アカウント | 安定して勝っているアカウントは3.14%。1,950アカウントは一つの出来事だけのインサイダーのように見え、投じた金額あたりの価格への影響が7〜12倍大きい |
| Bloomberg BusinessweekとPolysights、2026年7月 | 指摘された約34,000件の取引、2025年8月〜2026年6月 | 2026年1〜6月の不審な出来高は約$200M。指摘されたウォレットの57%は作成から一日未満 |
| Sirolly、Ma、Kanoria、Sethi(コロンビア大学)、2025年11月 | Polymarket、2022〜2025年 | 出来高の約25%が仮装売買だった可能性が高い |
出典:Harvard Law School Forum、The Block、Crypto Briefing、Decrypt。
これらはスクリーニングの結果であり、裁判所の認定ではありません。「不審」とはタイミングや規模が異例に見えるという意味で、一部は運や優れた調査によるものです。最大規模の研究の著者たちは、「インサイダー」(insider)ではなく「情報を持つ」(informed)という言葉を使っています。
インサイダー取引は予測市場をより正確にするのか?
数十年前に予測市場を提唱した経済学者Robin Hansonは、目標は最も正確な価格であり、私的な情報を持つ人は価格をそこへより早く導くと主張しています(Fortune)。PolymarketのCEO、Shayne Coplanも同様の考えを示しています(The Block)。
反対側の主張は三つあります。一般のトレーダーがインサイダーに負けると予想すれば市場を去り、スプレッドが広がって市場は薄くなります。出来事から利益を得られる人は、その出来事を引き起こしたり、タイミングを操ったりしようとするかもしれません。そして公職者が国家機密で取引すれば、害は市場の外にまで及びます(Brattle Group)。Gómez-Cramの研究は、市場の正確さは情報を持つ少数派から生まれ、大半のアカウントは損をしていると付け加えています。
価格の影響はトレーダーの外にも及びます。Brennan Centerが有権者1,994人を対象に行った調査では、Kalshiで候補者が67%と表示されると、その候補者が勝つと予想する有権者が10ポイント増え、84%と表示されると20ポイント増えました(Brennan Center)。
今後の展開
- Van Dykeの公判。2026年12月7日に暫定的に予定されています。公訴棄却の申し立てに対する判断で、「スワップではない」という主張が通るかどうかがわかります。
- スワップに関するCFTCの規則。CFTCは10月9日、イベント契約をスワップの定義に明記する案を示しました。実現すれば、今後の事件ではこの主張は使えなくなります(CFTC)。6月10日の別の提案は、そもそもどの契約を上場できるかに関するもので、インサイダー取引とは関係ありません(CFTC)。
- 連邦議会。2026年4月までに予測市場に関する連邦法案は14本提出されましたが、委員会を通過したものはありません(DeFi Rate)。インサイダー取引に焦点を当てたものとしては、非公開の政府情報を持つ人を対象とするH.R. 7004とS. 4188、選挙で選ばれた公職者と連邦職員を対象とするS. 4017とH.R. 8076があります。下院監視委員会は5月22日、両プラットフォームへの調査を開始しました(下院監視委員会)。
- 州。カリフォルニア州は3月27日、知事が任命した公職者が機密情報で取引することを禁じました(The Block)。10月20日にユタ州がKalshiを提訴した件は、こうした市場が州内で合法かどうかをめぐるもので、インサイダー取引とは関係ありません(Deseret News)。
予測市場で取引する人にとっての意味
- どの市場のリスクが高いかを知る。一人または少数の人が結果を決めたり知っていたりする市場(演説、企業の発表、軍事作戦、候補者の撤退判断など)で、インサイダーの事例が最も多く見られます。開票が公開される選挙や暗号資産の価格など、公開データに基づく市場では少なめです。
- 判定ソースを読む。市場の信頼性は、それを確定させるソースの信頼性で決まります。気象センサー、ストリーミングのチャート、地図は、いずれも操作されたことがあります。
- ニュース前の急騰は警告であって、判決ではない。情報を持つ誰か、公のシグナル、あるいは鋭い推測のどれでもありえます。いずれにしても、取引相手のほうが多くを知っている可能性があります。出来高と新規アカウントにも注目してください。私たちの検証では、価格よりもそれらのほうが疑惑のある市場をよく見分けられました。
- 仕事で知った情報で取引しない。仕事、選挙陣営、公務を通じて情報に触れられる立場なら、両プラットフォームはそれを禁じており、米国の規制当局は詐欺として扱います。上の事例は、いずれも少額から始まっています。
- フラグは証拠ではない。ウォレットに「インサイダー」の印を付けるトラッカーが示すのはパターンであって、身元や意図ではありません。
このリストのまとめ方
2026年のCFTCのプレスリリース、取引所のルールページと執行に関する告知、裁判報道、そして2025年10月から2026年10月26日までの主要メディアの報道を調べました。規制当局、検察、取引所、雇用主、または名前の明らかな研究グループが、特定の市場での特定の取引について説明している場合に、事例として収録しています。各事例の状況は、見つかった最新の情報源に基づいています。名前を出しているのは公人と、訴追や和解で当局が名指しした人だけで、それ以外の人は役割で記しています。一件、記者への脅迫については二次情報しかないため、編集部では未確認と明記しています。
価格の検証には、Polymarketの公開データ(市場情報はGamma API、価格履歴はCLOBの一分刻みのデータ、取引はData API)とKalshiの公開市場データを使い、2026年10月26日に収集しました。T0は、記録で確認できた最も早い公の報道または公式発表の時刻(UTC)で、市場ごとに出典を付けています。出来高はテイカーの約定を集計しています。「新規ウォレット」は、Polymarketでの初めての取引がその購入の七日前以内だったウォレットを指します。Kalshiはアカウントデータを公表していないため、ウォレットの指標はPolymarketのみが対象です。イスラエルの事件の市場は、起訴状が契約名を挙げていないため、私たちが独自に照合したものです。
よくある質問
Polymarketでのインサイダー取引は合法?
いいえ。Polymarketは2026年3月以降のルールで、盗まれた機密情報や違法な情報提供に基づく取引と、結果に影響を与えられる立場での取引を禁じています。米当局はPolymarketの国際版でのインサイダー取引で二人を訴追し、イスラエルは予備役将校一人と民間人一人を起訴しました。自分の調査や公開データに基づく取引は認められています。
予測市場でのインサイダー取引で訴追されることはある?
あります。2026年、米国の検察当局はPolymarketでの取引をめぐって兵士一人とGoogleのエンジニア一人を訴追し、CFTCはKalshiでの取引をめぐって二人と和解し、イスラエルは二人を起訴しました。判決が出た事件はまだなく、最初の公判は2026年12月7日に暫定的に予定されています。
Kalshiはインサイダー取引を認めている?
いいえ。Kalshiは、重要な非公開情報を使った取引、結果を生み出す組織の職員による取引、結果に影響を与えられる人による取引を禁じています。公職者、選挙陣営スタッフ、アスリートを事前にブロックしており、2026年の候補者少なくとも六人を取引停止にし、事案をCFTCに付託しています。
予測市場で最初のインサイダー取引事件は?
予測市場での取引に関連して公に知られた最初の逮捕は、2026年2月に発表されたイスラエルの事件です。CFTCによるイベント契約での最初のインサイダー取引の訴追は、2026年4月23日、Maduro市場をめぐるGannon Ken Van Dykeに対するものでした。
GoogleのエンジニアはPolymarketでいくら稼いだ?
CFTCによると約$1.2Mで、Google検索ランキング(Year in Search)2025に関する少なくとも23件の契約によるものです。2026年5月に訴追され、事件は係属中です。
予測市場のインサイダー取引で有罪になった人はいる?
2026年10月26日時点ではいません。米国の二件とイスラエルの事件は係属中で、二人は事実認定を認めも否定もせずにCFTCと和解し、残りは取引所が処理したか、疑惑にとどまっています。
価格からインサイダー取引を見抜ける?
確実にはできません。29市場の検証では、疑惑が指摘された市場はニュース前の24時間に比較対象より大きく動きました(残りの値動きに対する中央値で24%対5%)が、その差は統計的に確かではありませんでした。MaduroとGoogleの事件は最終日にほとんど動かず、疑惑のない比較対象の一つは公のシグナルだけで17¢から93.5¢に上がりました。出来高と新規ウォレットのほうがグループをよく見分けられました。
Polymarketのインサイダー取引トラッカーはある?
Bubblemaps、Polysights、Unusual Whalesなど、いくつかのツールやアナリストが、Polymarketの公開取引から新規ウォレット、大口ポジション、ニュース前のタイミングをスクリーニングしています。示すのはパターンであってウォレットの持ち主ではなく、フラグは犯罪の証拠ではありません。
次のステップ
予測市場が初めての方は、予測市場の仕組みガイドで価格、確率、支払いを解説しています。予測市場のプロップファームに関する記事では、確定済み8,266市場で手数料やルールが結果をどう変えるかを示しました。自分の資金で予測市場を取引したい方は、Melboで$1から始められます。